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NOVEL AIR【net-novel-1】


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リレー小説『ラスト・フォーティーン』のページです。
本作は2001年11月3日〜2002年7月8日に渡って、週刊連載されたものです。
本作品に対する、ご意見、ご感想等は、「BBS2」に書き込みしてください。
執筆陣⇒諌山裕/水上悠/森村ゆうり/大神陣矢/皆瀬仁太
【設定・紹介ページ 】【各話人気投票】【キャラ人気投票】


.第二節「二〇〇二年、夏」返信  

【Writer:諌山 裕】


 蝉が鳴いている。
 真夏日が続いて、夜になっても湿気を含んだ空気が漂い、暑く寝苦しかった。異常気象が騒がれはじめて久しいが、毎年のように猛暑だ冷夏だと一時的な感心は引くものの、問題にされるのはビールとクーラーの売り上げばかりだ。
 パジャマ姿の理奈は、学園に隣接する学生寮の二階の窓から木立の並ぶ新鮮な風景を見ながらため息をついた。
 温暖化のことが心配され警告されているものの、この時代の人々には馬耳東風だった。排気ガスを吐いて走る車は気分が悪くなるほどに走っているし、オゾンホールが開いているとわかっていても海岸には水着姿の人々がひしめいていた。肌を黒く焼くことがファッションとして流行っていることも、理解に苦しむことだった。やがてはこの夏が夏ではなくなり、蝉の鳴き声も聞こえなくなるというのに……。
「あの鳴き声の蝉って、なんだっけ?」
 誰にたずねるわけでもなく、彼女はいった。
「たしか、アブラゼミよ。この時期におもに鳴いてるのは。初夏の頃はニイニイゼミ、秋口になるとツクツクホウシだったと思う」
 ベッドの縁に腰かけたのぞみが答えた。彼女は起きたばかりで、目頭を手でこすっている。
「起こしちゃった?」
「ううん。目は覚めてたの。というか、あまり眠れなかった」
 綾瀬理奈と桜井のぞみは、私立“聖天原学園中学校”の学生寮で、相部屋だった。男子寮には神崎達矢と津川光輝が、やはり相部屋となっていた。
「あいつら、起きたかな?」
 理奈は窓から顔を出して男子寮を見る。
「どうかしら? ふたりとも時間にはルーズだから、まだイビキかいて寝てると思うけど」
 のぞみはクスクスと笑い、あくびをしながらきく。
「いまなん時?」
「まだ六時よ。朝食まで時間があるわ。ね、外、歩かない?」
 ふたりは着替えを始める。
 彼らが二〇〇二年に無事着陸してから、三週間が経っていた。決死の覚悟のタイムトラベルだったが、その過程はあっけないものだった。
 時空確率転送機(ディメンジョン・プロパビリティ・テレプレゼンス)=通称DPTの球殻の中にはいり、小刻みに体を揺さぶられると同時に気を失った。気を失っている間に、彼らの肉体は量子レベルで分解され、存在の確率を変えられて、時間と空間を超えたのだ。厳密には超えたというのも正しくない。
 ただ、存在するべき時間と空間の座標が変更されたのだ。……二〇〇二年の時代と東京という場所に。
 失敗していれば、彼らは再び意識を取り戻すどころか、存在自体が消えていただろう。あるいは、予定された時代と場所ではなく、まったく未知の世界に飛ばされていたかもしれない。
 四人が目を開けたとき、そこには排気ガスと騒音が充満していた。倒れていた彼らは、人々に踏まれ、つまづかれた痛みで意識を取り戻した。
 出現したのは渋谷駅前の交差点のど真ん中だった。道路を横断する群衆から罵声を浴び、人の流れが過ぎ去ると、車のクラクションの洗礼を受けた。
 戸惑いながらも彼らは立ちあがり、安全だと思われる方向へと移動した。彼らには奇異の目が向けられていたが、彼ら自身が周囲の世界に驚きの目を向けていた。
 まず彼らが確認しようとしたのは、いまがいつかということだった。おどおどきょろきょろしながら、正確な年代を特定する表示を探す。
「誰かにきけばいいじゃん」達矢はそっけなくいった。
 彼は近くの売店――それは宝くじ売り場だった――に歩みよった。
「すみません。今日の日付を教えてください」
「え? 一五日だよ。ほら、サマージャンボ発売中よ。どう?」売店の中年女性が答えた。
「なん年のなん月?」達矢はさらにきく。
「おかしな子だね。今年は平成一四年、今月は七月だよ」
 女性は怪訝な顔をした。彼の発音に英語なまりがあったことで、日本人ではないと思ったのだ。
「平成一四年! ということは、二〇〇二年だ! やった! おれたちは成功したんだ!」
 歓喜する達矢は仲間のところへ戻ると情報を伝え、それをきいた彼らは飛びあがって喜んだ。周囲の人々は四人の騒ぎぶりにあきれた視線を向けながらも、関わりになることを避けるように無視した。
 そこへひとりの初老の男が近づく。恰幅のよい男の目は、達観したように鋭いものを秘めていた。
「君たち、なにか困ったことはないかね?」
 突然の接触に、四人は警戒心を露わにした。
「別になにも……。すみません、騒いじゃって……」達矢は言葉に詰まった。
 男は不自然な笑みを浮かべていた。
「立ち話もなんだから、わしの車まで来てくれないか?」
 達矢は身構えた。
「あんた、おれたちをどうするつもりだ?」
「心配することはない。わしは君たちのことを知っている。二五九九年のことも、ディメンジョン・プロパビリティ・テレプレゼンスのことも。わしが君たちをサポートしよう」
 四人は驚きとともに逃げる態勢にはいった。
「まてまて、信用しろといってもすぐには無理だろうが、君たちは孤立無援だ。ここから逃げてどこへ行くというのだね? わしの話だけでもきいてみてはどうだ?」
 理奈が一歩前へ出る。
「そんなことできると思う? あたしたちには、あなたがなに者かのヒントもないのよ。そっちがあたしたちのことを知ってること自体、信用できないわ」
「もっともだな。やはり、選抜されただけあってただの子供ではないようだ」
 男は四人それぞれに視線を向けた。
「わしは、郷田義章。私立聖天原学園中学校の会長だ。君たちの受けいれ準備は整っている。この時代では、君たちは中学生だからな。学校も行かず、ぶらぶらしているわけにもいかないだろう?」
 彼らにとっては異世界の人間である周囲の人々の中で、郷田の存在は特別の意味を放っていた。四人は猜疑心を抱きつつも、郷田の申し入れを受けいれたのだった。
「あれから三週間か……。学校はなれた?」理奈はのぞみにきいた。
 制服に着替えたふたりは、学校の敷地内にある寮と校舎を結ぶ小道を歩いていた。石畳の道の両脇にはポプラの木が並び、手入れの行き届いた芝生の中には花壇が点在している。
 郊外にある聖天原学園中学校は、緑に囲まれていた。
 心地よい植物の香りを含んだ空気を、のぞみは胸いっぱいに吸いこんだ。
「ふぅ〜、いい空気よね。地球の危機がウソみたい。学校はまぁまぁね。レベルが低いのがつまんないけど。あんなの十歳までにすることだもの」
 理奈は同意の印に肩をすくめた。
「まぁね、彼らの人生は長いんだから。ゆっくりやってるのよ」
「でも、学園生活は楽しいわ。こんなに遊んでていいのかって思っちゃう」
「そうね。達矢と光輝のはしゃぎぶりにはあきれるわ。あたしたちの使命を忘れてるみたい」
「それについては、ふたりだけを責められないわ。わたしも毎日が楽しいから」
「特にランチタイムは楽しいわね。食べものも美味しいし」理奈は微笑んだ。
「そうそう、バイオプラントの食べものとは比較にならないわね。わたし、ちょっと太ったみたい」のぞみはお腹をつまんだ。
「のぞみも? あたしもよ。クラスメートの子たちがダイエットの話をしているのが、実感としてわかるわ。美味しいものが多すぎるのよね」
 ふたりは互いの顔を見て笑った。
 あどけない笑顔には、彼らの背負っている宿命の陰はなかった。同じ一四歳であっても、現代の一四歳とは意味も重さも違っている。しかし、ふたりはそのことを考えないようにしていた。いまのという時間を楽しむこと、そして周囲の環境に馴染むことが第一だったのだ。
 二六世紀末とはあまりに違う生活環境や風習、さらには言葉の使い方まで、実地に学ばなければならないことはたくさんあった。彼らが事前に学習した過去の歴史では曖昧な部分も多々あり、記録にも残っていなかった時代独特の空気があったのだ。
 彼らは帰国子女扱いで学校に編入された。それは不自然な行動や言葉のイントネーションの違いを説明するには、格好の理由だった。
 郷田の勧めではいった学校だったが、彼は謎の多い人物だった。なぜ彼らのことを知っていたのか、なぜ彼らの出現する場所と時間を知っていたのか、郷田は多くを語ろうとはしなかった。そのことは不信感にもなったが、利用できると四人は判断した。
 ひとつだけ郷田が明言したことは、彼ら四人が最初ではないということだった。以前に来た未来人がどうなったかについては、言葉を濁した。だが、想像はついた。十年前に来たのであれば、生きている可能性は低いからだ。
「面白い授業とかある?」理奈は話題を変えた。
「家庭科かな。先生が面白いし、けっこう好きだな。ときどきハチャメチャだけど」
「ふ〜ん。料理とかってすることなかったもんね。あたしは理科の立原先生が気になってる。だって、あの歳であんなに若々しくてセクシーなんだもの。信じられない。昔はあんなふうに歳を取ってたんだなって」
「ほんと。ちょっとうらやましいね」のぞみはうなずいた。
 理奈とのぞみは、十年後の自分がどうなっているかは想像したくなかった。
 朝のすがすがしい空気は、日射を強めた太陽によって徐々にはぎ取られていく。蝉の鳴き声が一段と大きくなり、抜けるような青空にはまばらに白い雲が浮かんでいた。
 理奈は目を細めて天空を見あげる。
 青く塗られた空の向こうに、彼らの生まれ育ったコロニーはまだ存在しない。それでも郷愁を感じずにはいられなかった。決して楽園ではなかったが、彼女の故郷には違いないのだ。
「ここは楽園ね」
 理奈はひとりごちた。
 その楽園が、束の間の世界であることを彼女は知っていた。見えていても、辿りつくこともつかむこともできない、虹のようなものだと。
 理奈はいまこうして生きていることの実感のなさに、我ながら驚いた。かといって、未来の世界でどれほどの実感があったのかも自信がなかった。
 たしかなことは、ここが二〇〇二年の夏であるということだった。空は澄み、空気は新鮮で、緑も多い。五感で感じる世界が現実なのだと、自分にいいきかせる。
 湿気を含んだ風が、理奈の長い髪をなびかせた。
「今日も暑くなりそうね」
 ふたりは歩いてきた道を寮へと戻っていく。
 昨日と同じように始まる一日でも、昨日とは違う今日。その積み重ねで日々が月日となり、年月となっていく。些細な変化が未来を変えるのだ。
 彼女たちはそのことを誰よりも知っていた。
諌山 裕 mail 2001/11/13火06:04 [2]


.第一節「未来の夏」返信  

【Writer:諌山 裕】


 物語の始まりと終わりは、未来。
 二五九九年――夏。新世紀を間近にひかえ、世界は深海の闇と圧力に屈したかのように沈んでいた。大地は腐乱することなく乾いたミイラと化し、空からは空気すら殺す勢いで紫外線が降り注いでいる。累々と横たわるコンクリートとジャンクが、殺伐としたモノトーンな墓地の風景にしていた。
 かつて“東京”と呼ばれた都市には、主のいなくなったビルが死体となって連なっていた。その多くが度重なる地震や巨大台風のために崩壊し、風化していた。都市の残骸の中には、すでに設計時の耐用年数を超えているにもかかわらず、存在感を誇示している高層ビル群があった。
 新宿――。
 遠くから砂塵で霞む情景を見ると、高層ビル群は繁栄していた時代を彷彿とさせるものがあった。しかし、見あげるほどに近寄ってみると、壁には亀裂が入り、突然変異して紫外線への耐性を高めた蔦が天へと駈けのぼろうとしていた。堅牢にそびえ立っているかのように見えるビルだが、それは過去の記憶がかすかに想い出せるほどに危ういものだった。いつ崩壊しても不思議ではなかった。
 一機の小型フライヤーが低空を飛行しながら、高層ビルに接近する。やがて、ひときわ高いビルを旋回しながら、その屋上へと着陸した。
 機体から四人が降り立ち、ビルの中へと消える。
 ビルの内部は外から見た以上に荒れて、もろくなっていた。いたるところで床や天上が抜けて穴があき、錆びた鉄骨がむき出しになっている。豪華だった内装は見る影もなく、あばただらけの瓦礫のパズルとなっていた。
 四人は注意深く階段を下り、通路を通って広いフロアへと入った。
 彼らはかつての都庁ビルの四五階、地上二〇二メートルから、街を見おろしていた。展望室だったフロアは、窓ガラスが割れ、強い風が吹き抜けている。
 眼下に都市の匂いはなく、乾いた砂埃が鼻孔をふさぐ。新宿に――死んだ東京の地上にいるのは、彼らだけだった。
 彼らは少年少女――メタリックな光沢のあるカーキ色のそろいのジャンプスーツを着た、ふたりの少年とふたりの少女。まだ幼さの残る顔だが、反面大人びた目をしている。
 それはこの時代の少年少女たちに共通した特徴だ。
 子供たちは十歳を過ぎるころには、一人前になるようにと教育されている。そうしなければ生きていけない世界となっているからだ。
 大部分の人類は、宇宙で生活していた。地球上は生きていくには不適切な環境となってしまったのだ。東京を訪れた彼らも、ふだんは軌道上のコロニーで生活している。荒れた地上にやってきたのは、彼らに課せられた任務のためだ。見かけは子供だが、彼らの年齢が人類の希望を託す中核となっていた。
 廃墟となった東京――。
 彼らの任務はここから始まる。
 四人の少年少女たちの中では小柄な、桜井のぞみが破れた窓から恐る恐る街を見下ろす。
「信じられないわ。かつてここに何百万もの人々が住んでいたなんて」
 彼女は四人の中で一番背が低かったが、体つきはふくよかで、ジャンプスーツの上からでも胸元はゆるやかなカーブを描いていた。
「あんまり近づくと危ないぞ、のぞみ」
 彼女から数歩うしろに立っている神崎達矢が、目を細めていった。彼は背が高く、やや長めの髪を、うしろで束ねている。
「キャッ!」
 吹きあげる突風が彼女の髪をもてあそび、のけぞらせた。のぞみはよろめいてあとずさり、光輝に抱きとめられる。
「ほらほら、だからいったじゃないか」
「それって、わざと?」
 皮肉な笑みをうかべて、綾瀬理奈はいった。スリムな彼女は、長い髪を背中の中ほどまで垂らし、体の動きはダンサーのような機敏さがある。
 腕組みして柱にもたれた理奈は、うんざりしたようにため息をつく。
「もう、いいんじゃない? 見学はこのくらいで。暑いし、埃っぽいし、早く帰りたいわ」
「理奈、これは遠足じゃないんだよ。これから行く世界についての下見なんだから」
 片手に携帯リグを持った津川光輝は、リグの画面に顔を向けたまま、上目遣いでいった。彼はやや丸顔で、髪を真ん中から分け、顔を下に向けると目が隠れる。
「リサーチは光輝の仕事でしょ? なんであたしたちまでつきあわなくちゃいけないの?」
「それはみんなが東京のことを知っておく必要があるからだよ。地理関係くらい頭に入れとかなきゃ、すぐに迷子になってしまうよ」
「はは! ばかいわないでよ。こんな腐った都市を見たからって、なにがわかるの? かろうじて残っている残骸じゃない。時間の無駄よ」
 理奈は大仰に両手を振った。
「おれも理奈に賛成だな。墓場を見たからってなにも面白いものはないぜ。このビルだっていまにも崩れそうだ」
 達矢はのぞみの肩に手をかけていた。理奈はのぞみに鋭い視線を向ける。のぞみは理奈の視線に気がつき、達矢から離れた。
「ええっと、わたしはもうちょっと見てまわりたいな。だって……、もう二度とこの時代には戻って来られないのよ。あ……」
 のぞみは口を手で覆った。
 彼女の言葉に、全員が黙りこんだ。
 考えたくないことを考えさせられることになったからだった。
「ご……ごめんなさい、わたしったら……」
「いいのよ。本当のことだもの。あたしたち、もう決心したんだから。たぶん」
 理奈の言葉には、ふだんの自信は感じられなかった。
「そうだな。未来はおれたちの手にかかっているんだ。そう信じている」
 達矢は拳を握りしめた。
「大口たたくのが達矢の悪いところよ」
「理奈だって、ずいぶんと大口たたいていると思うけどね」
「失礼ね。あたしは有言実行なの」
 達矢と理奈は目をあわせて微笑んだ。
 彼らは歩みより、円陣を組んだ。達矢は右手を中心に差しだす。理奈は彼の手に自分の手を重ねた。続いて、のぞみと光輝も重ねた。
 それぞれの手の温もりが、内なる熱いものを沸きあがらせる。無言のまま、彼らは仲間の目を見つめる。
「行きましょ。あたしたちのために、過去の地球へ」理奈が言葉を押しだした。
「ええ、誰のためでもない、わたしたちのために。それが世界を救うことになるんだから」のぞみは目を輝かせていた。
「うん、ぼくたちに残された時間は少ない。だったら、もっとスリリングな生き方がしたい」光輝は大きくうなずいた。
「おいおい、みんな自分の都合だけなのか?」
「あんただって、大差ないでしょ? こんな世界で老いて死にたいわけ?」理奈は皮肉っぽくいった。
「いいや。おれは人類の未来のために行く」
 達矢は胸を張った。
「嘘つき。嘘つきとは一緒に仕事したくないわ」理奈は辛辣にいった。
「う……」
 達矢は三人から懺悔を迫られていた。
 深呼吸した達矢は口を開いた。
「じつは、本物のロックコンサートとジャイアンツの試合を生で見たいんだ」
「げー! くだらない動機ね。でも、そのほうが達矢らしいよ」
 彼らは重ねた手を握りしめた。
「行こう! おれたちの過去へ」
「もちろん!」
「はい!」
「うん!」
 二五九九年夏――。
 この時代では一年中夏のような状態になっているが、それでも彼らには特別な意味のある季節だった。
 一四歳の少年少女たち。彼らの年齢は人生の夏だ。心も体も、未来に対して希望と可能性を信じられる年頃。しかし、それは束の間の夏だ。
 年が明けて、一五歳の誕生日を迎えると、彼らには人生の下り坂が待っている。若さと自由を堪能できるのは、あと一年なのだ。
 それは彼らに課せられた使命を達成できる時間も、一年しかないことを意味していた。
 時間は限られている――。
 だが、少年少女たちは、結果を恐れることなく走ることができる。それが彼らの特権であり、利点なのだ。
 いつの時代も、未来を切り開くのは彼らのような人間たちなのだから――。
諌山 裕 mail 2001/11/03土05:06 [1]

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2024/03/29金14:55