リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第三二節「時のユグドラシル」(後半)/諌山 裕

 三学期の終業式。  天原学園は緑と春の花に彩られている。校内の桜もつぼみが膨らみ、喜びとほのかな悲しみに淡い色彩の思い出をそえる。思春期の一年は長いようで短く、過ぎた時間は桜の花のようにはかない。そ... 続きを読む

リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第三二節「時のユグドラシル」(前半)/諌山 裕

“もろもろの聖なる族(やから)、ヘイムダルの貴賎の子らよ。私の言葉に耳をかたむけるがいい。死せる戦士の父なる神よ、ここに、御心に従い、記憶のはての古き世のさまを、語り説きたてまつる。  遠い世の巨人の... 続きを読む

リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第二六節「サイレント・ナイト」Part-3/諌山 裕

「見て、あの稜線には見覚えがあるわ!」理奈は指さした。  乾燥した荒れ地の西に、砂塵に霞む山々の稜線が地平線の上に浮かんでいた。太陽は昇ったばかりだったが、早くも大地を暑く熱し始めていた。 「ああ、た... 続きを読む

リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第二六節「サイレント・ナイト」Part-2/諌山 裕

 理奈とアンドルーがサバイバル生活を始めて、三五日が経っていた。三五日生き延びたというのが正しいかもしれない。  昼間の紫外線と熱さを避けて、朝方と夕暮れに活動し、食べられそうな植物や果実を探した。と... 続きを読む

リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第二六節「サイレント・ナイト」Part-1/諌山 裕

 一辺が三〇メートルほどの部屋は、まるでSF映画の未来住居を思わせた。壁と天井には三〇センチ四方のピラミッド型に突きでた壁材がはめこまれ、金属的な輝きと鋭利な先端が未来的な感覚と同時に落ちつかない緊張... 続きを読む

リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第十五節「時を賭けた少年少女たち」/諌山 裕

“そう、そうなのか、ここへ人々がやってくるのは、生きようがためのことなのか。ぼくはむしろ、ここでは何もかも死んでゆく、と言いたいくらいだ。”  ―――――ライナ・マリア・リルケ著「マルテの手記」の一節... 続きを読む