「行くのか」 そう声をかけられ、足を止めて振り向いたのは、少壮の若武者だった。 無骨な面体に憂愁の色をたたえた巨漢の姿をみとめ、ふ、と口元を緩める。 「ああ。もう、この地に用はないゆえ」 「勿体な... 続きを読む
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リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第七節「運命の選択」/諌山 裕
厚い強化プラスチック窓を通した漆黒の視界の中、白地に青と茶のマーブル模様の球体が横切る。 地球だ――。 それはリング型コロニーの自転に合わせて、見かけ上の運動をしている。地球と月との重力の平衡点... 続きを読む
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第五節「過ぎし日々の想い」/諌山 裕
乾燥し荒れ果てた大地――。 砂塵をかぶって埋もれたアスファルトが、干上がった湖底のようにひび割れてささくれ立っている。かろうじて道路の名残とわかる道筋を、体全体をすっぽりと防護するスーツを着て、ひ... 続きを読む
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第二節「二〇〇二年、夏」/諌山 裕
蝉が鳴いている。 真夏日が続いて、夜になっても湿気を含んだ空気が漂い、暑く寝苦しかった。異常気象が騒がれはじめて久しいが、毎年のように猛暑だ冷夏だと一時的な感心は引くものの、問題にされるのはビー... 続きを読む