リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第八節「妖剣・胡蝶陣」/大神 陣矢

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「行くのか」
 そう声をかけられ、足を止めて振り向いたのは、少壮の若武者だった。
 無骨な面体に憂愁の色をたたえた巨漢の姿をみとめ、ふ、と口元を緩める。
「ああ。もう、この地に用はないゆえ」
「勿体ないことをする。貴様ほどの遣い手なら、その腕だけでも身を立てられように」
「措け、佐平次。御手前の剛力にはおよばぬよ」
「それはさもあろうが、貴様の太刀筋……あれは神業よ。咒樂斎の『胡蝶陣』なからずんば、彼奴を討つこともまたかなわなかったろう」
 過分な賛辞だ、と笑って、咒樂斎と呼ばれた若者はやや声を落とす。
「剣術使いの時代はほどなく終わる。いや、もうとうに終わってはいるのだけれど。いずれは御手前も、剣を捨てねばならぬ日が来よう。……その日までに、先の思案を忘れぬことだ」
「莫迦な。俺は……どうあれ、剣のみで渡って見せる」
「まあ……良いさ。御手前は御手前の道を行け。私もそうするゆえ」
「そうか……」
 佐平次はさびしげにつぶやいたものの、じきに気を取り直したように、
「それなら……最後に、貴様の妙技を見せてくれ」
「タダで?」
「歌を贈ろう」
 はは、と咒樂斎は相好をくずした。
「先生の送辞を頂けるとは光栄」
「風流を知らぬ貴様には惜しいがな」
「げにも」
 ずらり、と抜刀した太刀を下段に構える。……
「“うつつなき”……」
 佐平次が、懐から扇を放る。
「“胡蝶の夢に”……」
 さらにもう一枚、二枚と放り上げる。
「“妹(いも)を見て”……」
 太刀が、跳ね上がる。
 ごう、と一陣の風がうねった。
 瞬きひとつ終えたのち、宙をひらひらと舞うそれらはもはや扇にあらず、無数の蝶へと変じていた。
「見事!」
 莞爾と破顔した佐平次だが、すぐに瞠目した。
 咒樂斎の身が、忽然と失せていたのだ。
「……返歌もなしに去るとは、つくづく、不粋よな」
 秋風が蝶の群れを吹き散らし、すべてが視界から失せるまで、佐平次はその場から離れることなく、立ち尽していた。
「……というわけで、けっきょく、ふたりの恋は実らないまま終わるわけなの」
 うっとりとした表情をうかべる桜井のぞみに、綾瀬理奈は呆れたような視線を送る。
「ずいぶん長い前振りだったわねぇ~……ンで? それがどうしたってのよ」
「だから、今度の、お芝居……」
「ああ、演劇ね……」
 間近に、文化祭が迫っていた。
 2人のクラスは演劇をやることに決まり、のぞみはその脚本を書くことになっているのだ。
 そこで郷土の文献などをあさっているうちに、野史に残された『胡蝶陣・久遠咒樂斎』の物語をエピソードを舞台化しよう、ということになったわけである。
 史料によれば、久遠咒樂斎は幕末の人で、剣の達人。当時近来にはびこっていた盗賊団を壊滅させ、人々の難儀を救ったと伝えられる。そのとき一五歳で、以後の消息は不明。
「もっと無難なのがいっぱいあるでしょーに……」
「うん、それはそうなんだけど。なんとなく、ピピッと来たんだよね。この人……咒樂斎さんって、風のように現われて、風のように去っていった……なんだか、儚い人」
 それに、とのぞみは続ける。
「数えで一五歳だったっていうのも、ポイントかな。それって、要するに現代なら一四歳ってことでしょ?」
 なるほど、自分たちと重ね合わせているわけだ、と理奈は合点する、
「まあ、あまり史料としては重要視されていないけどね。でも、ロマンがあるよね……」
「ロマンねぇ」
「うん。こういう強さが、ほしいと思うよね……」
 んなことより、あたしたちには優先することがいっぱいあるんだけどねぇ……とぼやきつつも、理奈は話を続ける。
「まいいや……あんたはちゃんと脚本仕上げてよね。あたしはちょっと出てくるし」
「え? どうするの?」
「買い出し。芝居となると、なにかと必要だからね」
「一人で大丈夫?」
「ん、あいつら連れてくから問題なし」
「なるほど」
「んじゃ、がんばってよね」
「うんっ、感動的なラブストーリーに仕上げるから期待してて」
「ラブ……?」
 ふと風に当たりたくなって、のぞみは寮の裏手にある木立に足を向けた。
(難しいものね……)
 舞台の脚本の件だ。引き受けてはみたものの、思いのほかてこずっていた。
 演劇と言う芸術については、十分な知識をもっているつもりだった。わからぬことがあれば、古今東西、いやそれどころか『未来の』演劇にまつわる情報すら参照しうるのだ。
 だが、『知っている』ことと、それを『生かす』ことは、おのずと別のことである。
(そういえば……)
 くだんの久遠咒樂斎にかんする文献の中に、彼が語ったと伝わる述懐があった。
 『私はものごとを知ることで、そのものごとを理解したつもりになっていた。しかし、それは驕りであった』というのだ。『歌を知っていても、歌を唄えるとはかぎらぬ』と。
 わたしたちのことのようだ、と自嘲気味にのぞみは考える。
 これから先、どのように歴史が進んでゆくか、わたしたちは知っている。
 だが、それだけだ。
 その歴史を覆し、よりよい方向へ導くための手段……それは、現時点では皆目、見当がつかない。
 あるいはこのまま、自分たちは何も為せないまま、時は過ぎてしまうのかもしれない……そんなふうに考えてしまうことも、しばしばだった。
 ついには、
(いっそ……この時代でなければ良かったのに)
 別の時代へ飛ばされていれば、いっそ気楽に過ごせたものを……と、思わないでもない。
 そこに至って、のぞみは頭を振った。
(ダメダメ……こんなこと考えてるようじゃ、みんなに迷惑かけるだけ……)
 そう思い、作業に戻ろうと、歩き出した……その、直後。
「……っ!?」
 言いようのない戦慄が、彼女を襲った。
 それは、単なる物理的なエネルギーではない、もっと別の気配……
(……まさか……これは……DPT(ディメンジョン・プロパビリティ・テレプレゼンス=時空確率転送機)ッ!?)
 彼女が振り向くのと、小規模ながら劇的なエネルギーの渦が巻き起こったのは、ほぼ同時。
 次の瞬間には、さきほどまで存在していなかったものが、そこに存在していた。
「あ……」
 のぞみは息を呑んだ。
 それは、血にまみれた着物姿の、腰に刀を佩いた若者だった。
 綾瀬理奈は駈けていた。
 ひとつには、買い出しに思いのほか時間がかかってしまったので、急いでいたのがひとつ。
 もうひとつは……
(のぞみ……)
 別れ際に垣間見せた、彼女の寂しげな表情。
 『強さが、ほしい』いう言葉。
 時が経つにつれ、それはより大きな比重をもって、理奈の心を占めていた。
 チームである四人のなかで、のぞみはもっとも繊細な性格だ。そりゃ、自分や光輝、達矢だって人並みに傷ついたり落ちこんだりもするけれど、のぞみは……何というか、真面目すぎるところがある。
 それは美点でもあるが、度が過ぎればマイナスにしかならない。
 まさかとは思うが、思いつめたあげく、何らかの形で暴発しないとも限らないのだ。
 だから、荷運びは男子ふたりに任せて、こうして帰りを急いでいるというわけだった。
(思い過ごしなら、それでいい……)
 と、いっそう足を速めようとしたとき。
「そこの娘」
 ふいに、凛とした声で呼び止められた。それも、娘、ときた。
 急いではいるが、いちおう立ち止まってしまうのも無理からぬところ。
「すみませんけど、あたし……」
 急いでるんです、と言いさして、理奈は口を閉ざした。
 それは、路地裏から現われた声の主が、あまりにも異質な風体だったからにほかならない。
 束ねた長髪、すらりとした体躯、色白の面貌……年のころは理奈と同じかやや上ていどか、なかなかの美少年……いや、美少女? であったが、彼女の言葉を奪ったのはそれが原因ではない。
 上下の着物姿。これはまあいい。足に目をやれば草鞋履き。これも、まあなんとか見逃せないこともない。
 が。
 腰に佩いているのは、あれは、刀……ではないのか?
(ゲイシャ!? ……いや、サムライ!?)
 理奈が古代(いや、この時代からすれば近世・中世だが)に存在したという特殊な階級の名を思い出すのと、それが二一世紀には存在しえないものである、ということに気づくまでに約1.05秒。そして結論を出すまでにはさらに0.05秒。
 結論。こいつは変な奴だ。かかわってはいけない。
 視線を反らし、走り去ろうとした彼女の足を止めさせたのは、鯉口を切る音だった。
「頼みがある。聞いてくれるか」
「……人にものを頼む態度じゃないわね」
 と毒づきつつも、理奈の視線はわずかにあらわとなった白刃に向けられる。
 あれがまがいものだという保証は? いや、たとえ竹光だって、殴られれば痛い。
 ここはどうやら、素直が一番らしい。
「服を脱げ」
「ヤだ」
 素直撤回。
「案ずるな。タダとは言わぬ……この着物と交換といこう」
「そ、それにしたってねえ! そんな……」
「ふむ……あまりのんびりともしていられないのだがな……この時代、この格好は目立ち過ぎる」
 ずんばらり、と抜き放たれた太刀が不気味に光る。重そう。
「ああ……何が悲しくて、二一世紀くんだりまで来て、ゲイシャに追い剥ぎに合わなきゃいけないのっ!?」
 ことの理不尽さに、思わず声をあげてしまう。あらためて確認すると、異常すぎる状況だ。
「『二一世紀に来て』……?」
 怪訝そうな追い剥ぎゲイシャ。そりゃそうか。
「ああもう、勝手にすりゃいいでしょ! 欲しいなら、こんな制服ぐらい……」
「『DPT』……」
「……へっ?」
 いきなり追い剥ぎゲイシャの口からそんな言葉を聞いて、理奈はリボンをほどきかけていた手を止めた。
「『DPT』利用者か?」
「なっ……なんで、知って……っ」
 やはりな、とつぶやいて、追い剥ぎゲイシャは刀を収めた。
「あやうく、『同胞』の身包みを剥ぐところだった。赦せ」
「はあ……えっ!? ってことは、あんた……も?」
 いかさまさよう、と追い剥ぎゲイシャ……は、もういいか……着物姿の若者は答えた。
「私もまた、時の導きにはぐれた流れ者よ……」
 少年は、高千穂涼(たかちほ・りょう)と名乗った。
 もっとも、その名はもうずっと使っていないがね、とも付け加えた。
「どうして……?」
 のぞみはひとまず、彼をひとけのない体育倉庫に連れ込み、治療に当たっていた。
 『関係者』である以上、公的機関を用いるのは問題があったし、何よりこの負傷は怪しまれる。
 さほど重傷でもないこともあり、のぞみが自前の医療キットで応急処置を施したのだ。
「それは……ぼくが、敗残者だからさ」
「え……」
 涼の話はこうである。……
 彼はのぞみたち同様、DPTで過去に飛んだ若者のひとりだった。
 しかし、彼を含むチームはジャンプに失敗、予定よりもはるかな過去に飛ばされてしまった。
 『最初』は、どうやら平安時代だったらしい。
「最初って……?」
「ぼくたちは、異なる時代にたどり着いたものの……それでもなんとか、生き延びようと努力していた。その矢先だ……」
 到着から数ヶ月後、突如彼らはまた別の時代……おそらくは鎌倉か南北朝時代……へと飛ばされてしまったというのだ。
「まさか……そんなことが!?」
 起こったのさ、と自嘲気味に涼。
「おそらくぼくらは、体質……というよりも、存在そのものの『確率性』が変異してしまったのだろう。つまり、この時代に存在する確率が、つねに100%にならないということだ」
 そのためか、周期的にジャンプを繰り返し、いくつもの時代を行ったり来たりしているのだという。
「幸いというべきか、その振り幅は数千年単位に収まっているようだがね……」
 二六世紀からやってきたのぞみにとってすら、にわかには信じ難い話だった。
 事実だとすれば、それは……想像するだに、苛酷なことだ。
「大変ですね」
 などという慰めの言葉も、かけられない。
「そういえば……他のチームの方は……」
 涼は押し黙ったまま、答えない。
「あ……すみません、わたし……」
「いや……いいんだ。ある者は戦争に巻き込まれ、あるいは疫病に倒れ、……自ら死を望んだ者もいた」
 ぼくは運よく……いや、運悪く、生き延びているだけさ、と涼は弱々しく笑った。
「そんな……あの! もしかしたら、わたしたちが、力になれるかも……」
 ムダだよ、と涼は手を振った。
「ぼくは、このまま……ずっとこのままなんだ。そして……すべては、無に還る」
「でも、そんなこと、わからない……」
「わかるのさ」
「え……」
「わかってるんだよ。ぼくは……」
 涼の目に、暗い炎が宿る。
「……ぼくは、人類の最期を、見てきたのだから」
「……と、まあ、かいつまんで言えばそういうことだ」
 御子芝樹(みこしば・いつき)と名乗った少女の話を聞き終えた理奈たちは、うう、と唸った。
 終わりなきジャンプ。繰り返される時間移動。
 しかも、いつ失敗し、量子の海に還るかもわからないのだ。
 あらためて、自分たちの幸運さを痛感する。
(それにしたって……追い剥ぎはないわよね)
(追い剥ぎはな~、ちょっとな~)
(ふふ……追い剥ぎとは穏やかでないが……それはそれで……)
「……何か言いたそうだな」
 いえそんなことは、と三人は口をそろえた。
「ま、苦労ではあったが……おかげでさまざまな体験もできた。悪いことばかりではないさ。こいつの遣い方などは、知りたくもなかったが」
 この人は、と理奈は痛感した。……強い。
「ところで……『私だけ』か?」
「え?」
「私のような境遇の人間を、他に知っているか? ということだ」
「いや……あなただけですが」
「ふむ……」
 樹は腕を組み、顔をしかめた。
「まずいな」
「何がです……?」
「私には『連れ』がいるのでね……」
 何度目のジャンプかは憶えてもいないが、と前置きして、涼は話しはじめた。
「あれは、二六世紀よりもやや後……もはや滅びの日を間近に控えた人類は、荒廃した地球に還り、終わりの日を待ちうけていた。しかし彼らは、押しつぶされそうな絶望に耐え切れず……ついには……みずから……」
「そ、そんなっ……」
「わかるだろう? ぼくやきみたちが、どれだけ手を尽くそうが……ムダなんだよ。人類は滅びる。だったら……ぼくらが何かをなしたところで何になる?」
「それ……は……」
 だから、と涼は続けた。
「ぼくは、人生を楽しむことに決めたのさ。……どうせ、明日とも知れない命だ。辛いことは考えず、楽しく生きたほうがいいじゃないか?」
 のぞみは、答えられなかった。
「なあ、ぼくと行かないか? 無為な使命なんかに、残された時間を費やすことはない……どうせなら、人生を謳歌しないか?」
「…………」
 涼の差し伸べた手に、のぞみの手が、重なり……
「……ぐっ!」
 鈍い音。涼が苦痛の表情とともに手を引く。
 足元には、扇……
「それくらいにしておけ、リーダー」
 涼のまなじりに、ドス黒い憎悪の色が映える。
「……御子芝ッ!!」
 駈けつけた理奈たちが見たのは。のぞみと彼女に寄り添う着物姿の優男、
 そしてそこへ、抜刀した樹がゆるゆると間合いを詰めてゆく。
「のぞみ!? そいつから離れてっ!」
「え……えっ!?」
 と、電光石火の挙動でのぞみの背後に回った涼が、彼女の喉元に小太刀を突きつけた。
「のぞみっ!? ちょっ……何やってんのよあんたっ!?」
「動くなっ……悪いね、のぞみちゃん……きみを利用して」
 呆れたような表情で、樹がいう。
「相変わらず、つまらぬ真似をするな。そんなに、小悪党呼ばわりされたいのか」
「好きに言っていろっ……さあ、のぞみちゃん……行こうか? 来てくれるね?」
「わ……っ、わたし……は……」
 小刻みに震える、のぞみの肩。
「のぞみとやら」
「!」
 丹田から放たれた、凛然たる声がのぞみを打つ。
「そやつから何を吹きこまれたかは、だいたい見当がついている。もし、貴様が『楽に生きたい』のなら、そやつに従うのもよかろう」
 だが、と樹は両の眉を跳ね上げた。
「『楽しく生きる』ことと『楽に生きる』ことは、同じではないぞッ」
「っ…………」
「運命から逃げるなら、すべてはムダだと信じて投げ出すなら、それもよかろう……だが、私は……運命とは計り知れぬものと信じている。われらが見た『人類の最期』も……あれがすべての結末とは限らぬのだから」まなじりを決する樹。
「ゆえに私は逃げはしない。いかに苛酷なさだめであろうと、みずからの手で切り開き、悔いなく生きぬき……天運尽きれば、倒れるのみだ!」
「わ……」のぞみの肩の震えが、止まる。
「わたしは……っ!!」
 のぞみの頬を、風が撫でた。
「ぎゃ……っ!!」
 駆け出しかけた涼が、扇で撃たれ、悶絶していた。
「奴はあの通り……人々に破滅のビジョン、破局の恐怖を語ることで、現世の利益を無為なものと感じさせるのが常套手段でね……ペテン師としては上々だ」
「はぁ……」
 涼を捕縛したのち、一同は学園長室でことの次第を報告がてら、樹の話に耳を傾けていた。
「先の時代でも,同じような真似をしていたっけな……幕末の話だが」
「え……!? ひょっとして……それって……そのときの樹さんの名前って」
「あぁ? 『久遠咒樂斎』と名乗っていたよ」
「……っ!」
「それで」と、郷田がいった。
「これからどうするのだね?」
「ま、この時代に辿り着けたのも何かの縁だろう。しばらく、御手前たちの世話になるとしよう」
「はぁ……」
「あの……」
「うん? ……ああ、貴様……きみか。何か用か?」
「すみません、その……わたし……」
「……気にするな。高千穂のあれは芸のようなものだ。惑わされても、恥とはいえぬ」
「いえ……でも、たしかに、わたしも……迷ってたんです。だから……」
「今は……どうだ」
「…………」
 ふ、とほほ笑んで、樹は振り返った。その視線に、返事は聞くまでもないと悟ったがゆえに。
「あのっ!」
「まだあるのか」
「あの、……佐平次さんへの、返歌は?」
 樹は立ち止まり……そして、いった。
「『“交わす邯鄲 探すでもなく”……』」
「意味は……?」
「いっしょに使う枕を、探す気はないってことさ」
 片手を上げて立ち去る樹を見送りながら、のぞみは、
『脚本、書き直しかな……』
 そう、考えていた。