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SF短歌/皆瀬仁太・作(旧作)
本ページの短歌は、2001年に発表された作品です。 「太陽のきんのスープ」と少女から呼ばれるクジラ高く跳ぶらし 細やかに銀河はめぐる星星のスピログラフを重ねつつ 秋 筋肉を強化しすぎたサイボーグみたい ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第三四節「始まりのエピローグ」/諌山 裕
九組のつぶらな瞳が、彼女に注がれていた。遊び盛りの子供たちだったが、彼女が物語を語ってきかせると、騒ぐこともなく夢中になっていた。 「のぞみおばあちゃん、それからどうなったの?」 子供たちの中で一 ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第三三節「未来の遺伝子」Part-3/諌山 裕
理想郷“エデン”は無人の都市であるかのように、ひっそりと静まりかえっていた。深夜の時間帯ではあったが、主だった通りでさえ出歩いている者はいなかった。エデンは突如として不気味な沈黙に包まれていた。 ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第三三節「未来の遺伝子」Part-2/諌山 裕
最近まで――というのは、二〇〇二年以前でのことだが、遺伝子研究者の間では、ヒトのDNAの九七%は意味のない塩基配列の反復であり、なんの役にも立たないと考えられていた。 ヒトゲノムの全塩基配列の地図 ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第三三節「未来の遺伝子」Part-1/諌山 裕
人類の歴史を語る過去の遺物。 過去を辿ることは、未来を予見することでもある。過去に起こった出来事を、直接垣間見ることはできないが、遺物は記憶の断片なのだ。そして記憶は未来を導く、道しるべとなる。 ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第三二節「時のユグドラシル」(後半)/諌山 裕
三学期の終業式。 天原学園は緑と春の花に彩られている。校内の桜もつぼみが膨らみ、喜びとほのかな悲しみに淡い色彩の思い出をそえる。思春期の一年は長いようで短く、過ぎた時間は桜の花のようにはかない。そ ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第三二節「時のユグドラシル」(前半)/諌山 裕
“もろもろの聖なる族(やから)、ヘイムダルの貴賎の子らよ。私の言葉に耳をかたむけるがいい。死せる戦士の父なる神よ、ここに、御心に従い、記憶のはての古き世のさまを、語り説きたてまつる。 遠い世の巨人の ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第三一節「エデン」(後半)/諌山 裕
♪♪ “時間がほしい、愛も、喜びも 空間がほしい、愛も ほしいの……私が アクション 私っていう女の子にセイ・ハロー 私の視界を覗いてみて 自分が誰だか確かめるために間違いだって犯すの ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第三一節「エデン」(前半)/諌山 裕
まっ白な空間。 すべてが光に包まれ、ふわふわと漂っているような浮遊感。彼は自分の体が、妙に軽くなっていることに気がつく。軽くなっているのは体だけではなかった。意識もふわふわと脈絡なく彷徨い、体から ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第三十節「夢の子供」/森村ゆうり
二月に入ると冬の寒さは、一段とその猛威をふるい始める。暦の上では、春らしい言葉が登場する頃だが、実際には一年で一番寒い時期だ。 校庭のポプラの樹も唯ひたすら寒さに耐えているかのように、細い枝を空へ ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第二九節「ラスト・デタミネーション」/皆瀬仁太
二〇〇三年一月。 年が改まり、三週間ほどが過ぎていた。 年末年始の感慨、などを感じている余裕もなく、『J3K』への調査を進めてきたが……。 「達矢は転移、のぞみは敵の手の内。どうすんだよ!」 ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第二八節「グッバイ、フレンズ」/大神 陣矢
ゴロゴロと何かが鳴っている。 何の音だ。 それは自分の腹の音だ、と気づいた。 ひどく寒い。 なんだ。この。寒さは。 それは、命が流れ出ているからだ、と悟った。 頬に何かがこぼれた。とても ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第二七節「ワン・クリック」/水上 悠
つけっぱなしだったテレビの画面に、なにげなく目を向けた黒井は、突然現れた臨時ニュースのテロップを見て、深いため息をついた。 『米軍がイラクの首都バグダッドに空爆を開始した模様』 すでに予期されてい ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第二六節「サイレント・ナイト」Part-3/諌山 裕
「見て、あの稜線には見覚えがあるわ!」理奈は指さした。 乾燥した荒れ地の西に、砂塵に霞む山々の稜線が地平線の上に浮かんでいた。太陽は昇ったばかりだったが、早くも大地を暑く熱し始めていた。 「ああ、た ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第二六節「サイレント・ナイト」Part-2/諌山 裕
理奈とアンドルーがサバイバル生活を始めて、三五日が経っていた。三五日生き延びたというのが正しいかもしれない。 昼間の紫外線と熱さを避けて、朝方と夕暮れに活動し、食べられそうな植物や果実を探した。と ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第二六節「サイレント・ナイト」Part-1/諌山 裕
一辺が三〇メートルほどの部屋は、まるでSF映画の未来住居を思わせた。壁と天井には三〇センチ四方のピラミッド型に突きでた壁材がはめこまれ、金属的な輝きと鋭利な先端が未来的な感覚と同時に落ちつかない緊張 ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第二五節「秘密」/森村ゆうり
カリカリという小さな音がはてしなく続く、緊迫した空気に占領された教室で、生徒たちは本分である学習の成果を示す試験に取り組んでいた。 天原祭が終わるとすぐに学園は中間考査のテスト期間に突入する。生徒 ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第二四節「ある夜のイヴたちへ」/皆瀬仁太
晩秋。 風に揺れる紅葉が、濃く、鮮やかだ。 もみじ葉は、美しく色づいて来た季節と冬とを隔てる、境界線といえるのかもしれない。やがて本格的に葉は降りはじめ、生じた隙間から少しずつ冷たい風が吹き込ん ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第二三節「未明の綾瀬」/大神陣矢
綾瀬理奈はつと躊躇った。 手をいちど引っ込め、……しかしややあって再び手をドアへ差しのべる。 その部屋つまり十四号室は、彼女たちが暮らす聖天原学園女子寮A棟の真ん中に位置しながら、長らく空き部屋 ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第二二節「Angelic Conversation」/水上 悠
あの日以来、「イヴ」のイメージは薄くなる一方だった。 何処からか一方的にやってくるだけのイメージを、無理に捕まえることなど考えたこともなかったが、「イヴ」のイメージだけは、なんとしても捕まえておき ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第二一節「ミス・マリア」<後半>/諌山 裕
第一体育館の舞台裏。 ミス・マリア・コンテストのスタッフは、準備万端で候補者が現れるのを待つ。部屋にいるのは女生徒ばかりだ。着替えをしたりするために、男子の入室は厳禁なのだ。 最初にやってきたの ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第二一節「ミス・マリア」<前半>/諌山 裕
銀河の星々を映しだす天体測定ラボ――。 理科室はスタートレック・ボイジャーの天体測定ラボへと様変わりしている。ベニヤ板とダンボールと発泡スチロールを使い、天文部員の作った粗末なセットではあるが、雰 ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第二十節「波紋」/森村ゆうり
本来なら昼の光が差し込んでくるはずの窓という窓には暗幕が張られ、第一体育館はただ一ヶ所を除いては暗く静かだった。人々が息を殺して見詰める先には、明るく照らし出された舞台があった。 引き込まれる。 ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第十九節「夢見るものの夢」/皆瀬仁太
「ふふん、見たところ体力だけが自慢のようだな。この勝負もらった」 達矢はにやりと笑ってみせた。彼の計算では凄味が出ているはずなのだが、ゲーリーは達矢と同じように「ふふん」と鼻を鳴らしてみせた。 「女 ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第十八節「天原ステーション特別編・第ニ部」/大神 陣矢
「はーいみなさんこんにちはッ放送部によるおなじみお昼のプログラム天原ステ~ィション特別拡張版がいままさに再・スッタァ~~トッ一年生による第一部に続いてこれからはワタシたちニ年生コンビがみなさんのごっ機 ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第十七節「花火」/水上 悠
ごくありきたりの学校。 私学ってこと以外、とりたてて何かが違うわけじゃない。 違うところがあるとすれば、代々学校に伝わる怪談の類が、ウソじゃないってことくらいだろうか? 自分でいうのもなんだけ ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第十六節「文化祭への道2」/森村ゆうり
「もっと時間が欲しい……」 呟いたのは、技術家庭科担当教諭、菅原拓郎その人だ。 今日は、天原祭前日。終日、その準備にあてられている。 正確に言えば、昨日の午後からずっと天原祭のために生徒も教師も ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第十五節「時を賭けた少年少女たち」/諌山 裕
“そう、そうなのか、ここへ人々がやってくるのは、生きようがためのことなのか。ぼくはむしろ、ここでは何もかも死んでゆく、と言いたいくらいだ。” ―――――ライナ・マリア・リルケ著「マルテの手記」の一節 ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第十四節「美しき神々の憂鬱」/皆瀬仁太
光輝はため息をついて、パソコン画面から視線をはずした。まぶたの上からそっと眼球をマッサージする。ここ最近、目にかなりの負担がかかっていると感じる。この時代のパソコンは電磁波が強くてストレスがたまりや ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第十三節「十二人目のイヴ」/大神 陣矢
目をひらくと、はるか頭上に地面があった。 それも道理で、彼女はケヤキの枝に両足をひっかけ、ぶら下がっていたのだ。 「ここにいたか、御子芝」頭上に吊られて見える人影がいった。 考えごとを邪魔された ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第十二節「ミッシング・トリガー」/諌山 裕
私立「聖天原学園中学校」の文化祭――天原祭を二週間後に控えて、校内の雰囲気は徐々にテンションが高くなっていた。 天原祭は生徒たちが中心となって企画・運営され、各学年、各クラスから選ばれた実行委員に ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第十一節「RE:突然のメール失礼いたします」/水上 悠
タブレットの脇にペンを置いたところで、メールの着信を告げる音が初秋の明け方の冷たい空気に満ち始めていた空虚な部屋の中に響いた。 彼は椅子を回し、背後にあるメール端末にしているノートパソコンの液晶モ ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第十節「二十六世紀の肖像」/皆瀬仁太
寮の窓から差し込む陽が、奥のベッドまで届いていた。いつのまに群れたのか、秋あかねが景色に色を加えている。ついっと線を引くように飛ぶ幾百のその姿にのぞみは目を奪われていた。 (あかとんぼ、か) 童謡 ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第九節「文化祭への道」/森村ゆうり
九月とはいえ、秋の気配など微塵も感じさせない暑い日が続いていた。 学園では十月初めに開催される文化祭に向けて、生徒も教職員も準備に余念が無かった。聖天原学園中学校の文化祭は、一般的な中学校の文化祭 ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第八節「妖剣・胡蝶陣」/大神 陣矢
「行くのか」 そう声をかけられ、足を止めて振り向いたのは、少壮の若武者だった。 無骨な面体に憂愁の色をたたえた巨漢の姿をみとめ、ふ、と口元を緩める。 「ああ。もう、この地に用はないゆえ」 「勿体な ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第七節「運命の選択」/諌山 裕
厚い強化プラスチック窓を通した漆黒の視界の中、白地に青と茶のマーブル模様の球体が横切る。 地球だ――。 それはリング型コロニーの自転に合わせて、見かけ上の運動をしている。地球と月との重力の平衡点 ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第六節「オースティン3章16節に曰く」/水上 悠
キン! 耳障りな金属音が二人の気まずい沈黙の中に不協和音となって飛び込んできた。 「あれがベースボールってヤツか?」 アンドルー・ラザフォードが興味なさそうにいった。 「違うね。ベースボールじゃ ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第五節「過ぎし日々の想い」/諌山 裕
乾燥し荒れ果てた大地――。 砂塵をかぶって埋もれたアスファルトが、干上がった湖底のようにひび割れてささくれ立っている。かろうじて道路の名残とわかる道筋を、体全体をすっぽりと防護するスーツを着て、ひ ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第四節「職員室」/森村ゆうり
午前中とはいえ八月の太陽は、じりじりと全てのものを焦がす勢いで照りつけている。 校庭のポプラの木もいくぶんうんざりしたように見えるのは気のせいだろうか。 「暑いわ。エアコン、入ってるはずなのに暑いわ ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第三節「決闘者たち」/大神 陣矢
「まさか、お前とこういうことになるとは、な」 少年は唇をゆがめ、手にした得物に力をこめた。 「……それは……こっちの台詞さ」 相対するもう一人の少年は目を細め、身をかがめた。 「でも……もう、後戻 ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第二節「二〇〇二年、夏」/諌山 裕
蝉が鳴いている。 真夏日が続いて、夜になっても湿気を含んだ空気が漂い、暑く寝苦しかった。異常気象が騒がれはじめて久しいが、毎年のように猛暑だ冷夏だと一時的な感心は引くものの、問題にされるのはビール ...
リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第一節「未来の夏」/諌山 裕
物語の始まりと終わりは、未来。 二五九九年――夏。新世紀を間近にひかえ、世界は深海の闇と圧力に屈したかのように沈んでいた。大地は腐乱することなく乾いたミイラと化し、空からは空気すら殺す勢いで紫外線 ...