リレー小説『ラスト・フォーティーン』 第十八節「天原ステーション特別編・第ニ部」/大神 陣矢

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「はーいみなさんこんにちはッ放送部によるおなじみお昼のプログラム天原ステ~ィション特別拡張版がいままさに再・スッタァ~~トッ一年生による第一部に続いてこれからはワタシたちニ年生コンビがみなさんのごっ機嫌をうかがっちゃおうかなーーっていう寸法だったりなーんかしますんでしたりするんですよろしくはげしく美しくぅ~~~、ふぃッ!」
「みなさん天原祭を楽しんでいただけていますでしょうか? 生徒たちがいっしょうけんめい準備した成果のほどをじっくりとご覧くださいね」
「てアンタは素かプレーンか無着色かっかっかかー!なによそのテンソンの低さ弱さはかなさったらればばられろればらりら。そんな按配じゃアちゃっちょこぴーのぴこりーぴんてチャンネオ変えられちゃうってばくさったらればさもお」
「あなたがハシャギすぎなんです。校内放送にチャンネルも何もないでしょう」
「オーゥソウリィそうだったネワタシニホンにキてマモないからチョトカンチガイしたのコトネ許してごめんね三拝九拝三跪九叩」
「どこからの帰国子女なんでしょうね。ムダ口叩いてないでちゃんと放送しますよ。まずは最初のナンバー、PKDの『もう人間じゃない』からいってみましょう」
「チェちぇーっ軽々と飄々と人の魂ケズリマッケンローのシャベクリを流してくりちゃってってってぇ~~っ」

♪人間やめた 人間やめた 人間やめちゃった
 やっと やっと 人間やめられたよ

「あらためましてこんにちは、文化祭特別プログラム『天原ステーション特別編』第ニ部のパーソナリティを担当します放送部ニ年のマッキ―こと真城島です。これからニ時間、みなさんに憩いと安らぎのひとときを提供したいと思います。よろしくお願いしますね」
「ってはーーいはいはいワタシワタシワタシもワタシも放送部ニ年せぇーいのチャァキチャキ天原っ子タッチ―こと樋渡達でぇーーすぅみなさんよろしくよろピクよろしかよろしけれェ~~ン。なんつって」
「何がどうなんつってなんだかわかりませんがまあいいです。第一部同様、私たちのトークと音楽を交えつつ天原祭の模様をお伝えしたいと思います。聴いてくださいね」
「とゆーか聴け聴け聴いてお願い聴いてください頼みますこのとおーり地べた地べたべたべた」
「あなたは態度がでかいのかひかえめなのか分かり辛いですね。まいいや。えーまずは、今後行われる発表物にかんするPRのコーナーです。最初のお客様は、ニ年三組の代表、桜井さんです。はじめまして、真城島です」
「あ、はい、はじめまして、桜井のぞみです。よろしくお願いします」
「あはぃはいはぃ樋渡達ですひ・と・た・ちっ!ひわたりたちとか読まないでくださいよ読まないでよ読んじゃいやいやンでもでもむしろ読んでほしいののののんのん」
「はぁ……」
「えと、この子はあんまり相手しないでいいです。さて桜井さんは三組の発表物についてPRしにきてくださったんですよね?」
「あっ、はい。今日の午後二時から、第一体育館でお芝居を上演します。ぜひ、観に来てください」
「おっと演劇ですか。どんなお話なんでしょう?」
「はい、タイトルは『イヴのおとしもの』といいます。四人の少年少女が、滅びかけた世界を救うために、過去にタイムスリップして活躍する、というお話なんです」
「ナントカントサイレントナイト、それはってばいわゆるサァイエンス・フゥィ~~クショォ~~ンな味加減のストーリーってな按配なのかのですかしら?」
「そう……ですね。当初は歴史ものにしようと思ってたんですけど、いざ書いてみたらぜんぜん別物になっちゃってました」
「おっと、そういえば桜井さんはこのお芝居の脚本・演出も担当されたとか。凄いですね~」
「いやいやいやいや正味の話お若いのに大した才媛スこーんなにプリティなのに文才もアリアリだなんて天はニ物を与え放題っすねブツブツブツねったましぃほどにうらやましかッスよほとほととほほと」
「若いったって、同い年でしょうが。でも、ホントに凄いですね」
「いえそんな……でも、クラスのみんなががんばってくれたおかげで、とても見ごたえのある舞台になっていると思います。ぜひ、大勢の方に観ていただきたいなぁって、思います」
「なるほどなるほどなるにつれ興味シンシン胸ジンジン期待ぶくれの幻想広がりワタシもメチャ観に行きたいっスわその『ナイーブな天使たちの堕落』ッ」
「て全然タイトル違うし。第一、あなたはこの放送があるでしょうが。おやっ!? 手元の資料によると、桜井さんは帰国子女だそうですねぇ。それにしては日本語がご堪能でいらっしゃる」
「いえ、そんなこと」
「っつぅ~かアナタキコシクジョならもっとこれこのこう特有の喋り方をしなきゃソンですわよ丸損損ッそれをもってキシクジョコ的なぁアイデンティティを確立してほどよくじんわり周囲から浮いてみせてくれるソレがコシキジョクらしい立ち居振舞い一挙手一投足とゆーものではなかろーかと思われるわけなんですがッ」
「なんですが、とか言われてもね。えーそんなわけで、桜井さんありがとうございました。演劇、がんばってくださいね」
「あ、はい。がんばります。ありがとうございました。樋渡達さん、がんばってね」
「うん。演劇のほうよろしくね。ワタシは手伝えないから」
「てあんたらクラスメイトかい!……それでは最後に次のナンバーを紹介していただいて、お別れです。ニ年三組桜井のぞみさんでした。ありがとうございました」
「はい、それでは聴いてください、KW・Jで『シスター・アダー』」

♪はさみがあれば 裁縫だって 解剖だってできちゃうの
 わたしのはさみ はさみを還して お兄ちゃん

「さて続いては名物コーナー、学園じゅうを飛びまわってなんでもかんでも実況してしまう『吶喊天原放送部ゲリラニュースニ十四時』の特別版です。えーただいま、タッチーに学生食堂へ行ってもらってます。どんな具合ですか、タ~~ッチ~~ッ?」
「はぁいぁいぁいあいあいあいこちらァ学食ですッんがッお昼どきということデまさしく戦場と見まがわーんわんわんばかりのソリッドな混み具合ィィヒィィててて押さないで押さないあぁぁぁぁぁんあんあんこここことほどかように人人人人人まみれなありさまですよぅ人人人人人おぅおぅおぅ」
「いやあ、かなり繁盛しているようですね。とここで、学食で喫茶店を催している料理研究会の部長である三年の渡さんと電話がつながってます。渡さんはじめまして。お忙しいところもうしわけありません」
「いえいえ。部員のみんなが頑張ってくれていますから大丈夫です。わざわざ取材していただいて有難うございます」
「丁寧なお言葉いたみいります。ところで例年、学食では料理研究会が喫茶店をやっているわけですが、今年はこれまで以上に客足が伸びているようですね?」
「ええ、これも部員たちのおかげです。中でも、……ってあーちょっとちょっと、そこの女子! 学食内での写真撮影は厳禁よ!! ってそこっ!! 『ウエイトレス』を質問責めにしてひとりじめしなーい!!」
「あの、渡さん、渡さん? …………えー、だいぶエキサイトしている模様ですね。素晴らしいリーダーシップです。ところでタッチー、もう復活した?」
「ウィエアッス!死んでも殺されない無敗のオンナ樋渡達タッチーいまここに帰還せりァあぃあぃあぃとはイエさっすがに今回ばかりは遭難するかと!放送事故かと!悠久の時の彼方にフェイダアウェイして学園七不思議プラスワンとして名鑑入りかと!」
「ごくろうさま。えーと、部長さんがどっか行っちゃったから、そのへんの人にちょっとインタビューとかしてみてほしいのね」
「了解でしたが!さあどこのどいつのこの野郎にクエスチョンという名の諸刃のツルギを突きつけてあげようかと!思案しておりますがさてしかし!このシャイなワタシをして呼びかけずにはいられな~イ御仁はなかなかいないってっばっあっ……れっ、はっ、てちょっとちょっとそこを道行くお兄さん!?いやむしろお姉さん!?」
「……後にしてくれ。私は見かけどおり忙しいのでな」
「いやしかし追求せずにはいられないその状態!両手に手にした食器の山は重ね重ねて合計二十はいっていようかという!しかも女子でありながらもウエイタールックというもうツッコミどころ満載のあなたはただのウエイターではないと見たが如何かものかどうなのか!」
「案ずるな。まことただのウエイターゆえ。では急ぐ身ゆえ失敬」
「っとあーっとワタシの抜き身の突撃クエスチョンもするりとかわした男装ウエイターの彼女が足取りも軽快に厨房へと颯爽たる帰還ッまさしく蝶が刺し蜂が舞うがごとくゥ~~!おもわずお客さんたちも箸やスプーンやハンマーを止めて拍手喝采おひねり乱舞感謝御礼ポケット満載~~!」
「あなたがもらってどうするのよ。ちゃんとインタビューして頂戴」
「くはらわっアンタマジクールやねワタシの苦労も知ることもなさらないでぃいいぃけどねぇぇぇさぁてでは気をとりなおしてッちょーーっとそこを闊歩する体格のイイウエイトレスさぁーーーんメイアイヘルプユゥアッ」
「え? おれ? ……あっ!?」
「そうそれそお……ってアナタはッどこかで見覚えがあると思いきやワタシのクラスメイトであるところの神崎クンだったりなんかしませんかいダンナええ?」
「ウッ……い、いや、人違いじゃないかしら?」
「この期におよンでその白々しいにもほどがアリアリなそのリァクッションはある種見事ッしかしそうはいってもまあ。バレるよソレ」
「……やっぱりか……」
「いやいゃいやややしかしワタシアナタはバリバッソーの体育会系スクワット一日三千回プロテイン三リッター野郎だとば~かし思ってやがりましたがドレソレこーしたことなのョそのゴッスロ~リな、すなわちゴシック・ロッリ~~タ調のコス・チューム・はッ!!幻滅だよ!!幻が滅びたよいまここに音を立ててザザーンとよ!ゴスーンとよ!!」
「こっ、これにはいやしかし、深い意味と経緯と設定がっ……」
「言い訳なんかノーリスペクト!聞きたくないッシング!!このトシで女装趣味だなんてもぉ将来が愉しみで仕方ないのトリコロール!!」
「フッ……ぶざまな格好だな」
「ウッ!? 貴様はっ……」
「あーーっとここで突然乱入者が登場ッ誰かと見ればやはりワタシのクラスメイッである交換留学生ゲーリー・ブッシュ君だァそして神崎クンとのあいだには見えざる火花が鍔迫り合って飛散漏電注意一生火事の元~~ッ」
「話に聞いたときはまさかと思ったが……ホントにそんな格好で働いてるとはな。いったい、何の罰ゲームだい?」
「関係ないだろ……仕事の邪魔だ、注文しないのなら、帰れよ」
「……ヘッドドレスなんぞ着けて睨んでも説得力ないぞ」
「ほっとけッ……」
「うぅおぅっとコレはまさに両者を結ぶのは因縁という名の血塗られた赤い糸なのかっ早くも抗争の導火線に点火されてしまうというのかしらしららしら~っ!?」
「ええ、これはもう、拳で決着(きめ)るしかないわね」
「っぉうっとそうおっしゃるのはいつのまにか戻っておいでの渡さんッッやおらオラオラと物騒な発言を発されてますがその真意たるや!?」
「渡さん、止めたほうがいいんじゃないですか?」
「ええ、止められるものなら止めたいところね。でも、これはいわば必然、男ふたりがにらみ合えば、どちらかがどちらかをしのぐために行動しなければいけない。それは言うなら本能の領域、もう誰も彼らを止めることはできやしないわ」
「よくわかりまセンが無責任だってコトはよくわかるコメントサンクスですおぉうあっと、言ってるそばから神崎×ブッシュの番外戦が始まってしまったーーッ両者ものすごい形相で激しい取っ組み合い~ッこれはお客さんには大迷惑だッと思いきやそろいもそろって思わぬボーナストラックに拍手喝采天原コールだッノリが良すぎるぞ今日のお客~~ウ!!」
「ああ、椅子も使うのね」
「ああーっ椅子!椅子ゥ椅子を持ち出したのはブーッシュ!しかし負けじと神崎も手近なテーブル!テーブルに手をかけたーーッここに予期せぬ天原凶器王決定戦のゴングが叩き鳴らされようとしているというのでしょうかしらあ~~~ンッ」
「御子芝さん、そろそろね」
「あーーーっとここで厨房から電光石火の勢いで誰かが走ってきた!手にはオーダーされたイチゴケーキセットッそして神崎に駆け寄るやテーブルを踏み台にして顔面に痛烈飛び膝蹴り~ィッッああッしかもその反動を利用してブッシュの側頭部にも膝蹴りゥイ~~~ッ!両者のけぞってダ~ブルノ~~~ックダゥ~~ンッそしてそのまま17番テーブルにケーキセットをお待ちど~~うっ!!ふたたび観客からは大・天原コールとおひねりの乱れ咲き~~ッ!!」
「やるわね、御子芝さん」

「なかなかにぎやかな様子でしたね。皆さんも学食に行くさいはおひねりをお忘れなく。それでは、ここで次のナンバーです。聖天原学園中学校校歌『まだ視(み)ぬきみへ』ユーロビートバージョン。聞いてくださいね。……」